Differential effects of plantar cutaneous afferent excitation on soleus stretch and H-reflex.
Muscle & Nerve 39(6):761-9 · June 2009
伸張反射は本来中枢からの抑制を受けているが、脳卒中者ではこの抑制が外れて伸張反射が生じやすい状態になっていることが多い。姿勢保持においてこの伸張反射は重要であるが、本論文では足底感覚との関連性を検討しており、興味深い内容だったため読むことにした。
intro
立位や歩行において、足底の圧覚の障害はバランス障害を生む。足底の皮膚からの求心性情報は足関節運動にかかわる運動神経の興奮性を調節すると報告されている。
皮膚からの求心性情報に加えて、伸張反射も歩行と姿勢保持に重要な役割を持つ。
そのため、本研究では踵と中足骨に対して電気刺激を加え、伸張反射とH反射がどう変化するかを検討する。
method
16名の健常成人
右足部をフットプレートに固定し、足関節0°、膝関節160°、股関節120°屈曲位の椅子座位を実験姿勢とした。
伸張反射の誘発は機器を用い、200°/sで足関節を10°背屈、H反射は脛骨神経に電気刺激を加えた。
足底皮膚刺激は図1のように中足骨と踵部に電極を貼付した。
背景筋電図をヒラメ筋に貼付した。
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result
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黒線:コントロール(足底皮膚刺激なし)の平均値
灰色の太線:足底皮膚刺激ありでの伸張反射の平均値
灰色の細線:各伸張反射
(左)踵骨刺激、(右)中足骨刺激、(上段)刺激感覚40ms、(中段)刺激感覚15ms、(下段)筋電図によるアーチファクト計測(矢印は足関節背屈の開始時)
踵刺激では、ヒラメ筋の伸張反射の出現がコントロール(刺激なし)に比して速く、振幅も大きかった(図2の左上段)
中足骨刺激では、伸張反射の振幅の減弱が認められた(図2の右中段)
H反射は伸張反射とほぼ同様の結果を示した。
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臨床アイディア
結果より、踵骨部刺激では伸張反射は促通され、中足骨部では抑制されていた。結果を立位での姿勢制御に当てはめると、中足骨部に圧が増加する場合というのは、重心が前方移動する場合であり、足関節は背屈しヒラメ筋の筋紡錘は伸張されるため、伸張反射は促通されるのではと思っていたが、結果は逆で抑制されていた。実際、Tokuno (2007) は立位での足圧中心前方移動に伴ってヒラメ筋の筋活動とH反射の増大を認めており、今回の結果と異なる。
本研究は座位、尚且つ膝、股関節を大きく屈曲した姿勢で計測している。立位で足底に圧刺激がある状態とこの座位姿勢では条件が大きく違うため、結果が異なったのかもしれない。中足骨部の皮膚刺激がヒラメ筋の伸張反射を促通するかどうかを調べるとするならば、立位、足圧中心の前後方向に偏位がない状態を開始肢位として、なんらかの方法で中足骨部の皮膚刺激を増大させた場合と皮膚刺激がない状態で、H反射の増大に差異が生じるかどうかで検討できるのではないか?
今回の研究から、少なくとも足底皮膚刺激がヒラメ筋の伸張反射に影響を与えるということがわかった。臨床応用として、脳卒中者のヒラメ筋を伸張する際は、中足骨部を刺激しながら行うと、ヒラメ筋の伸張反射が抑制され、背屈角度の向上が得られやすい可能性がある。
中足骨底の刺激でH反射が減少すると言うのは、足部前方に圧がかかった時にヒラメ筋の活動が抑制されると言う事。つまり地面を叩かないし、蹴らない機構が備わっているのでは?junkaneko.icon